0000261682 00000 n 脳梗塞の再発予防に「抗血小板剤」を、そして心房細動からの脳塞栓の予防には「抗凝固剤」が使用される。抗血小板剤と抗凝固剤の使い分けについて解説する。, 脳梗塞には次のようなタイプがある。このうちラクナ梗塞が最も多く、最近年配の方を中心に心房細動にかかる方が増え、そのせいで脳塞栓が増加している。脳梗塞は夏に多い傾向があるが、脳塞栓は幾分冬季に多い傾向がある。, このタイプの脳梗塞は一般に皮質枝と言われ、脳の動脈の中でも太い血管に起こり、高脂血症(脂質異常症、高コレステロール血症)や糖尿病から動脈硬化(アテローム硬化)を起こし、それによって起こるタイプの脳梗塞である。つまり動脈硬化性病変の狭窄度が徐々に進行し、最終的に血栓により閉塞する病態である。そして、このタイプでは太い血管が詰まるため、脳梗塞を起こすと、一般に広い範囲の脳梗塞を起こす。例えば失語症があれば皮質動脈の閉塞を考えるが、ラクナ梗塞では失語は起こらない。症状は緩徐完成性で、進行、動揺することが多いとされる。なお不安定プラークの破綻により急性閉塞をきたす場合もある。, 細動脈硬化に起因する穿通枝深部動脈の血管壊死やリポヒアリノ―シスよる狭窄、そして閉塞であり、危険因子は高血圧。この病理学的変化は脳梗塞のみならず脳出血を引き起すことにもなる。ラクナとは西洋チーズの切断面にみられる空気穴に似ていることからきた名前である。, 皮質枝からの穿通枝開口部に生成したアテローム硬化病変を起因とする開口部の閉塞により、結果として穿通枝の閉塞をきたしたものである。穿通枝領域の梗塞を起こすが、穿通枝梗塞と違い、皮質枝梗塞すなわちアテローム血栓症と同じ危険因子(脂質異常症、高コレステロール血症や糖尿病)である。このBADは急性期脳梗塞の10〜17%、非心源性脳梗塞の15%〜25%を占める。BADは、穿通枝に沿った細長い脳梗塞になるため、CTで3スライス以上連続する脳梗塞がみられる。BADの25〜39%に症状の進行がみられることから、発症後、あるいは入院後に症状が進行することが多く、運動機能の回復が良くないという特徴がある。, 代表的なものが心原性脳塞栓(cardioembolic)。通常皮質を含んだ大梗塞を生じ、症状は突発完成性。塞栓源としては心房細動、急性心筋梗塞、拡張型心筋症、人工弁などを基礎疾患として左心耳、左心房、左心室に出来た壁在血栓によるもの、または粘液腫、疣贅(ゆうぜい:感染性心内膜炎による細菌性のこぶ)などによる。閉塞後の再開通による出血性梗塞を認めることも多い。それ以外に 血管原性塞栓(artery to artery embolism)すなわち動脈硬化により頚部内頸動脈分岐部にプラーク(粥腫)があり、そこからはがれた血栓が遠位の中大脳動脈まで飛び、そこを閉塞した場合など、あるいは大動脈原性脳塞栓、すなわち上行大動脈から弓部かけての部分における粥状硬化巣や解離からの塞栓症もある。このような場合、シャワーを浴びたような皮質枝領域の小梗塞の多発で発症することが多い。, 例えば内頸動脈閉塞あるいは中大脳動脈主幹部の閉塞の際に、中大脳動脈遠位部が後大脳動脈や前大脳動脈からの側副血行により血流がかろうじて維持されている場合などで、血圧が下がった際に同部の灌流圧が低下し虚血を生じて脳梗塞に至るもの。, 血栓症の発生に、動脈では血小板が、静脈などで血液が滞るために起こる血栓症では凝固因子の働きが重要である。すなわち血流が速く、血圧の高い動脈では摩擦力(ずり応力)大きくなり、一方、血流の遅い、血圧の低い静脈で小さくなる。血栓ができる際には、この「ずり応力」が強く影響するが、「ずり応力」が大きいところで血栓ができる際には、「血小板」が最も大きな働きを果す。一方、ずり応力が小さい、血流の滞留しているところでは、フィブリノーゲンをはじめとする「凝固因子」の働きが活発になることが大きな役割を果す。従って摩擦力(ずり応力)の高い動脈で、動脈硬化が主体となる血栓症を防ぐには、血小板の働きを抑えることが必要となる。一方、血液が滞ることが主体となる血栓症などでは、凝固因子の働きを抑えることが必要となる。そこで、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など、動脈で起こる血栓症では、主に抗血小板薬が使われ、人工弁置換術後、心房細動、深部静脈血栓症、肺梗塞など主に血流の乱れや鬱滞による血栓症では、抗凝固薬が主に使われることになる。, なお、血小板と凝固因子とは、お互いに影響し合い血栓を作ることがあり、両者の働きを明確に分けることが困難な場合もあって、抗血小板薬と抗凝固薬との両者が必要になることもある。, フィブリンがつくられるには、まず血管内皮が傷ついて組織因子が血中に現れ、凝固第7因子と結合し反応が始まる。次にプロトロンビン(凝固第2因子)がトロンビンに変化し、最終的にフィブリノーゲンをフィブリンに変える。この反応の際に現れる凝固第2、第7因子(他に第9、第10因子)は「ビタミンK依存性凝固因子」と呼ばれ、これらが肝臓で作られる際にビタミンKを必要とする。すなわち抗凝固薬としてよく使われる「ワーファリン」は、その作用機序から、ビタミンK拮抗薬と呼ばれる。つまりプロトロンビンなど血液凝固因子の合成に欠かせないビタミンKの働きを阻害することにより。その結果として、凝固系の働きが抑制され、抗血栓効果を発揮する。その作用面から抗凝固薬もしくは抗凝血薬、または血液凝固阻止薬などと呼ばれる。, 抗凝固薬のうち注射薬としてはヘパリン、低分子ヘパリン、アルガトロバン、ダナパロイドナトリウム、フォンダパリヌクスが使用されている。経口投与できる抗凝固薬には「ワーファリン」が使われてきた。ワーファリンは、直接、凝固因子を抑えるわけではないので、飲み始めから作用が安定するまでに時間がかかる。また、その作用に影響する遺伝子が人によって異なるため、効き方に違いがあり、さらに体調や食事内容などによっても効果が変わることがある。そこで服用中は、効果の程度を定期的に検査し、服用量を調節する必要がある。そのため「プロトロンビン時間(PT)検査」が行われ、これを国際標準化プロトロンビン比(INR)で表示する。 google_ad_client="pub-3439760619160488";