!ロボコン』を放映中という縁で制作局をテレビ朝日に変更することとなった[2][注釈 5]。しかしテレビシリーズが中断して久しい『仮面ライダー』は、当時の感覚からするとすでに過去のブランドであり、テレビ朝日も「ネタがないから」と渋々引き受けた風だった[7]。, 追い風となったのは『せがた三四郎』である。『仮面ライダー』で本郷猛(仮面ライダー1号)を演じた藤岡弘、が演じる同キャラクターは仮面ライダーの人気再燃を盛り上げた[8]。鈴木武幸によると、こうした盛り上がりが本作品の誕生につながったとのことである[9]。またプロデューサーの髙寺成紀は、プライズゲームで仮面ライダーシリーズの景品が売上を伸ばしていたこともきっかけになったと証言している。当時は漠然と「好反応」とだけ認識されていたが、これはゲームセンターに来る年齢層がライダーに興味を示すようになった表れであり、旧作の視聴者が父親になって「親子2世代」ファンを形成する端緒であった[10]。, 髙寺成紀の企画案『仮面ライダーガーディアン』はヒーロー色の強い明快な作風で、雄介のキャラクター設定にその名残がある[11]。この時点での髙寺は、関係各社の期待を裏切らないように従来のヒーロー番組の路線に沿ったものを構想していた[12]。その後、石森プロが提出した企画案『仮面ライダーオーティス』が[2]ホラー色や悲劇性の強いものだったために方向性の再検討を求められ、髙寺は抜本的な見直しを決意した[12]。なお他の仮題には、漢字での表記が提案された後の「王者」という案も存在した[2]。, まったく新しい仮面ライダーを作ろうとする髙寺の意気込みは強かったが、初期案のファンタジックで型破りな主人公像を実現するには『インディ・ジョーンズ』並の予算が必要だとか[13]、「地球人と宇宙人とのハーフ」という設定はライダーのイメージから離れすぎているという指摘を受けて、従来のライダーに新味を加えていく方法を模索することになった[14]。, 髙寺が考えた「仮面ライダーらしさ」とは、ライダーという異形のヒーローの隣に滝和也や立花藤兵衛のような生身の人物が並び立つ「男と男」の構図だった。これは雄介と一条薫のバディという形で実際の作品に活かされている。一方、旧作の基本設定だった「改造人間」という要素は、必須のものではないと見なされて排除された[15]。, この時期の仮面ライダーというブランドには「2世代ヒーロー」以外に売り込む要素がなかったため、新世代を意識した旧作との差別化が図られている[16]。, 制作には昭和ライダー以上に期間を設け、極力ご都合主義や設定破綻を避けるため、主に脚本づくりに時間をかけていた。特に本作品ではシリーズ構成や文芸部といった、東映作品としては珍しいポジションが設置されており、ストーリーや設定の統一がなされている[2]。こうした手法に関し、髙寺はドキュメンタリー風のドラマ『ER緊急救命室』から受けた衝撃の大きさについて語っている[17]。, 全編がHDTV (HD1080/60i) で撮影されており、当時としては異例の16:9の画面比率(レターボックスサイズ)で放映された。ただし、当時は撮影のみがハイビジョンで行われ、ポストプロダクション・完パケ・本放送はSDTVで行われた。そして、従来のアフレコ形式より同録形式に改められ、ビデオ撮影に対応した技術会社やクルーが参加することになった。しかし、長年に渡ってフィルムとアフレコ撮影で制作を続けてきた現場スタッフは、ビデオと同録での撮影方法に慣れていないことから現場の進行が滞り、撮影開始1週間でカメラクルーからスケジュール通りに予定カット数を撮影できないと苦情が発生[18]。東映上層部で元のアフレコ撮影に戻そうという会議が行われたが、それを耳にした録音部のスタッフが撮影技師・いのくままさおに頭を下げて尽力することを訴え出たことで、スタッフ一丸となって同録が継続されるに至った[19]。, 劇中のシーンが変わるごとに、劇中の時間と場所を表示する形式になっている。劇中の描写と時間の経過は整合性を取るために綿密に計算されているが、交通機関でのシーンでは劇中の時間を現実の時刻表に合わせるための調整が必要になるなど、苦労も多かったという[20]。, 第2話の教会炎上シーンには莫大な予算がかかり、本作品の予算を逼迫させたとも伝えられているが、これについて高寺は「こっちで勝手に盛り上がった。絶対に予算の許可は下りないと思ったんですね。でも制作担当は簡単に許可してくれた。多分『初めてパイロットを撮る石田秀範監督を男にしよう!』と思ってくれたんだと思う」と語っている[21]。ただし、教会炎上については過剰に言われている部分もあり、高寺は「教会よりも遺跡のシーンのほうが予算がかかっている」と述べている[22][23]。九郎ヶ岳遺跡のオープンセットは映画並みのスケールで[24]、スタッフが洞窟に入るための橋を架ける必要があったほか、映像にまったく映らない玄室への通路までわざわざ作られていた[13]。, リアリティ重視の路線を進んだ結果、設定や描写に生々しかったり過激な表現が盛り込まれているという意見もあり、純粋な子供向けのヒーロー番組を望む親を中心にクレームが多く寄せられるなど、物議を醸した[25]。スポンサーからも、仮面ライダーの呼称が登場しないことや人間に近いグロンギのデザインなどにクレームがあり、東映内部からも2クール目から作風を変える指示も出されたが、髙寺成紀は決して譲らなかった。テレビ朝日プロデューサーの清水祐美や、急遽協力することとなった脚本の井上敏樹の尽力もあり、一貫した制作体制が維持された[26]。, 結末の一つとして、雄介がグロンギの親玉であるン・ダグバ・ゼバとの激闘で命を落とす結末も考えられていたという。これは「人々を守るためとはいえ、彼も暴力を振るった責任を取らせるべき」という考えからだった。しかし、髙寺をはじめとするスタッフは「これからの厳しい時代を生きる子供たちに夢を与える番組で、その結末は残酷すぎる」という結論に至り、雄介が海外に旅立つ結末になったという[27][28][29]。, オートバイスタントにトライアル元全日本チャンピオン・成田匠が参加。旧作では室町レーシングやスリーチェイスなどのカースタントチームが参加していたが、「本物のオートバイ競技のアクションを取り入れたらどうか」とのスタッフの意向で成田に打診された。トライアルのアクションを取り入れる動きは『仮面ライダーストロンガー』の時代にも試みられたが、事故で断念されており、25年ぶりの試みとなった。, 車種の選定も成田によって行われ、初のスペイン車によるライダーマシンが完成した[2](車種の詳細は後述)。成田の初登場となる第4話では様々な段差や障害物を越えて縦横無尽に駆け回る姿が描かれ、従来のアクションとは違うことが強調された。その後もウィリーによる「前輪パンチ」やジャックナイフによる「後輪キック」など、トライアル技の応用によるダイナミックなアクションが展開された。また、第31 - 33話で、成田匠の弟の成田亮がバイクを操る怪人ゴ・バダー・バを演じた。バダーのマシンであるバギブソンは、トライチェイサーと同じパンペーラを使用した[30]。2人のプロ選手による湘南海岸での戦いは多くのトライアル技術が披露され、従来描かれていた土煙を上げて交錯するうちに敵が倒れていくオートバイ戦とはまったく違った画面が完成した。, 本作品もヒーローと怪人の戦いを描いているが、同時に「怪人出現という事件の起きた時代を捉えたドキュメンタリー」の様相も帯びている。怪人への恐怖が社会に蔓延する中で「こんな時代に子供を産んでいいのか」という不安を抱く保育士、仕事に追われて息子の授業参観に行けず涙する研究者、TV批判を口にする教師など、ヒーロードラマという枠の内では解決しきれない問題を視聴者に投げかけている[31]。30分番組の中で実社会を描くことには限界があるため、こうした個人の描写に社会の反応を集約させている[32]。, 刑事ドラマとしての側面が強いが、これは『機動警察パトレイバー』から平成ガメラ、平成ウルトラマンシリーズ、さらに『踊る大捜査線』を経て発展してきた官僚機構としての警察を描く手法を取り入れたものである[33]。, 特撮作品にありがちな、超技術を保有しているのにやられ役を演じる防衛組織とは異なり、本作品での警察は連携する医師や研究者なども含めて超能力を持たない普通の人間であり、勇気と責任感で超常現象に立ち向かう[34]。警察組織の描写のリアリティを追求するため、脚本の荒川稔久は「もし本当に怪人が出たら、どの部署が対応するのか」と埼玉県警察に問い合わせた。回答によれば「殺人課は人間の起こした犯罪事件を取り締まるものなので違う。出動するのはおそらく警備部の野生動物を管轄するところだろう」とのことであり、一条薫は長野県警警備部所属と設定された[13]。ほかにも通信の場面で当初使われていた「本部より」を「本部から」に改めたり[20]、パトカーの出入りに使う扉の方向を決めるなど[13]、細かな事象でも現実の警察を意識している。ただし、すべてを現実に合わせているわけではない。たとえば「本部長」という呼称は実在しないが、対策本部の統率者と理解しやすいため劇中で使われている[20]。, 自衛隊の出動にまで至ると、パニック物という別ジャンルの作品になってしまうため、劇中での事件対処はあくまで警察の域に留まっている[29]。, 後の平成仮面ライダーシリーズ(以下、平成ライダー)に比べると、勧善懲悪的と言われる[35]。劇中の悪はグロンギだけで、人間は善として描かれている[36][37]。悪と言ってもグロンギは、ショッカーのようなピラミッド型の敵組織ではない。これは当時まだ1995年までにオウム真理教が引き起こした一連の事件の記憶が鮮明であり、連想させかねないようなモチーフを使えなかったことが一因である[38]。また、元々は怪獣好きとして知られる髙寺が怪獣映画の人間サイズ版を志向したのだろうと、切通理作は推測している[39]。普段の外見は人間と変わらない存在でありながら、まったく理解できない理由で殺人を繰り返すグロンギは「怪物ではなく人間、もしかしたら隣人こそが恐ろしい」という現実の社会の恐怖を、子供向けに翻訳したものであると虚淵玄は解釈している[40]。, 放送当時に凶悪化していた未成年者の犯罪への対策が叫ばれ、加害少年を保護する少年法の改正案が国会に提出されたその時期に、第34・35話が制作された。ゴ・ジャラジ・ダ(人間態も少年)は快楽的に高校生を次々と惨殺、ジャラジに狙われて怯える生田和也少年に、雄介と一条はジャラジから守ることを誓う。そして、怒りに震えるクウガはジャラジに凄まじい暴力を振るってとどめを刺した。白倉伸一郎は「殺人者は未成年者であっても厳罰に処する」というメッセージを読み取っている[41]。殺害事件と対比する形で、わかば保育園での社広之と寺島周斗の喧嘩が描かれている。広之から傲慢な態度を非難された周斗は素直にそれを認め、2人は和解した。雄介は「人間だからわかり合える」と信じていた。これを観た國分功一郎は、「懲悪の側に強く同一化した大人の作為というものを感じざるを得ませんでした」と語り、白倉に賛同している[42]。, それに対し切通は、グロンギを同じ人間の中の異分子と捉える見方に異論を唱えている。切通は『クトゥルフ神話』が世代を超えて書き継がれるように、闇の恐怖や未知の怪物への畏敬を失うまいとする流れがあり、その怪人版がグロンギだったと解釈している。しかし、後の平成ライダーでは人間同士の争いにテーマが変遷したため、未知なる存在と人間の戦いを描いた本作品の感覚がわかりづらくなったのだろうとも述べている[43]。, ヒーローが担う正義について、管理秩序社会を志向していると白倉は指摘する。第25・26話ではゴ・ブウロ・グ出現と同時に、雄介の小学校時代の恩師・神崎昭二の現在の教え子である霧島拓が、栃木から1人で東京にやってきた。拓は未来に悩んだ末、昔よく遊んだ思い出の場所を訪れる。神崎から連絡を受けて拓を捜索した雄介は、拓に「もっと悩め」と激励する。白倉はこれを、「子供が規定された生活圏から逸脱するのは、ヒーローに出動が要請されるほどの大事なのだ」という感覚の発露としている[44]。また、宇野常寛は「正義が虚構となった時代だからこそ、あえて正義を語るのだ」という物語回帰性を指摘、暴力の持つ欺瞞を「あえて」引き受け、さらに少年少女を教導する役も負う、市民道徳の体現者として主人公を見ている[45]。この件についても切通は別解釈を提示しており、教師から相談された主人公が、ヒーローではなく1人の人間として少年に接し、問題を解決しようとする姿を描いたのだと捉えている[46]。, 海老原豊は、後半になって敵が強力になっていくほど、逆に戦闘描写が減少する傾向に注目し、暴力制止のために暴力を振るうという正義の矛盾に解を示さないまま、その矛盾を引き受けた主人公を画面からフェイドアウトさせることで、むしろ正義の困難性というメタメッセージを発信しているとする[47]。, いずれにせよ、子供たちに正しい大人の生き方を示そうとする髙寺と、価値観の一元化こそが諸悪の根源とする白倉では、正義の考え方がまったく相容れないのは明白である[48]。しかし、この2大プロデューサーの相克が、のちに続く平成ライダーを進化させていく原動力となったと、井上伸一郎は述べている[49]。, 仮面ライダー玩具の定番である変身ベルトは「ソニックウェーブDX変身ベルト」の商品名で発売された。ひとつの商品で長く遊んでもらうためと、劇中のアークルが唯一無二の存在だったことから『仮面ライダーBLACK RX』のようにフォーム毎でベルトを変えるのは止め、多色発光によってフォームチェンジを表現している。しかし当時まだ多色LEDが普及していなかったため、赤色以外はムギ球で光らせている[50]。ステレオ音声が一般的になったテレビ事情に合わせて、ベルトにも左右バックルに大型スピーカーを搭載し、左右で異なる音声が鳴ることで立体的な音響空間を創出している[51]。開発陣はアクション監督の金田治、スーツアクターの富永研司とともにスイッチの操作方法がわざとらしくならないような変身ポーズ[51]を考案し、以後のシリーズでポーズと玩具ギミックが連動する流れを作る[52]。, ドラゴンロッドなどの武器玩具もそれなりに売れたが、キックが決め技の仮面ライダーらしさを意識して合体武器路線を避け、『RX』の経験を生かして新たな効果音と発光を仕込んだ強化パーツ[51]「ライジングパワーセット」を発売[52]。以後の年末商戦における仕掛けの基本となった[50]。, パーツを換装することでフォームチェンジを再現できるフィギュア「装着変身」シリーズも好評だったが、劇中での出番が多くないグロンギ怪人のソフビ人形まで売れたことはバンダイの想定外であり、商品化においては露出時間の長さではなくキャラクター性の強さが重要だという認識を促した[5]。, 最終回のバンダイ玩具CMでは、ファンに向けて「五代雄介と一条刑事をいつまでも忘れないでね」という特別メッセージが表示された[5]。, 放送開始当初は視聴率が前作『燃えろ! 秘密に堕つ ボイスドラマ完全版 … HERO SAGA MASKED RIDER KUUGA EDITION』では地球に落下した隕石により、, 文芸担当の村山桂のクウガを殺害するのは力強いタイプではなく、一見ひ弱で虫も殺さないような顔をしたタイプという意向からギノガのキャラクターが創作された, 常用しているバイクはトライチェイサー2000のベース車と同じガスガス社のバンペーラであり, 元々、グロンギのボス的な立場という設定だったが、後に職人的立場として重要な存在に改変されたバルバのように再設定された。また、怪人体デザイン案もあったようだが、劇中で登場することはなかった, 初期設定案では、ゴ集団より上位のジャ集団も存在していた。だが、統合されて形態変化能力を持つガドル、ジャーザ、バベルの3体がゴ集団の中の最強3怪人と位置付けられた, ジャン・ミッシェル・ソレル - セルジュ・ヴァシロフ (5 - 9, 11, 13, 14, 16, 20 - 24, 27 - 30, 34, 35, 37, 42 - 49), 椎名純一 - 畠山真 (21 - 23, 29, 30, 32, 33, 43 - 45), ズ・バヅー・バ(3-6)、ゴ・バダー・バ(21,23,25,27-29,31-33) -, キャラクターデザイン - 飯田浩司、阿部卓也、野中剛、青木哲也、鈴木和也、竹内一恵, Aタイプ:ノイズ風シンセの音が入るもの(シングルバージョン、映像では未使用だがコンピレーション・アルバムにはこちらが収録されることが多い), Bタイプ:ノイズ風シンセの音が入らないもの(アルバムバージョン、映像では基本形として使われたもの), レンタルは2000年10月13日より開始され、セル用とレンタル用でジャケットのデザインが異なっている, DVDはレンタル開始時が後年の作品より早かったため、特典は各巻ごとではなくインタビューはセル版のみで, テレビシリーズには未登場であった未確認生命体第34号「メ・ガベリ・グ」との戦いが描かれた。, ガベリのおおまかなデザインや設定、ゲゲルの内容を含むストーリーの原案は東映から公式に提供された, 『週刊 仮面ライダー オフィシャルパーフェクトファイル』デアゴスティーニ・ジャパン.