本のアイデアと自分の経験を結びつけて、さりげなく自己PRも交えながら。 そして漫画も映画も音楽もテレビもラジオもゲームも全部好きという無節操ぶり。いろんなことに詳しいようで、逆に言えば何も究めていないということなのではないか? 興味のおもむくまま道を歩いていたら、自分の武器を見失ったように感じていた。   あの壇上の講師の言葉が頭をよぎる。 講談社の採用試験で山場となるのは、三次面接だ。これはその三次面接で面接官から言われた一言であり、就職活動を通して一番冷や汗をかいた場面だ。 本音だった。 こういった歌詞が、私を悩みの渦から救ってくれた。, 2019年1月にギラン・バレー症候群で入院した。その影響から、一度目の就職活動は周囲からかなり遅れて始めた。受けたいと思っていた出版社のエントリーは入院中に締め切られていた。「どうせ自分なんかはエントリーシートを出しても受からなかった」と自分に言い聞かせ、いわゆる大手企業を片っ端から受けた。 それでも、講談社の一次面接と二次面接ではたくさん好きな本の話をして面白がってもらい、なんとか通過できた。そして迎えた三次面接でぶち当たったのが、冒頭の一言である。ありきたりな武器しか持たない私は、自信のなさのあまり、知らず知らずのうちに守りに入ってしまっていた。もうどうにでもなれと武器を捨てて、誰にもしたことのなかった、薄暗い心の澱の話をすることにした。 スタートこそ遅かったけれど、「いい子ちゃんはしない」と腹を括ったのは間違いじゃなかった。, ESSAYいい子ちゃんなんていらない文系・関西・四年制大学卒業見込み/女性/ファッション・ライフスタイル志望, 彼らの努力を間近で見守った結果、私にとって就活は「いい子ちゃんを演じなきゃいけないもの」になってしまった。, やる気が起こらないまま迎えた5回生の2月。やっとこさ重い腰を上げたが、そんな準備不足でうまくいくはずもなく、講談社の面接が始まった6月の時点で内定は1つもなかった。, それでも私は頑なに、模範解答を用意しなかった。決めてきた言葉ばかり話すのは、嘘をついているみたいで嫌。, が、2次面接は初めての対面面接ということもありかなり緊張した。大好きな韓国の話ばかりしてしまい、重要そうな質問にはうまく答えられない。終わって社屋を出た瞬間、涙が溢れた。やっぱり「自分の言葉で」なんて綺麗事で、ちゃんと作っていかなきゃいけなかったんだ。これだから就活は嫌なんだ、とすっかり落ちた気分でどうぶつ達と島に引きこもり、一心不乱に魚を釣っていた。だから合格通知は、驚いて何度も見直した。, 3次面接はもっと緊張した。なんとか入り口をくぐると、警備員さんが温かい言葉をかけてくれた。ここは社員さんだけじゃなく警備員さんまで優しいのか。建物全体で優しいな、と心の底から感動して半泣きになった。, ちょっとびびりながら、正直に答えた。講談社への想いは本気だ! 伝われ! と念じながら話した。東京から家に帰る駅のホームで合格を知ったときは、喜びのあまり人目も気にせず小躍りした。, スタートこそ遅かったけれど、「いい子ちゃんはしない」と腹を括ったのは間違いじゃなかった。, 面接は自分を作る場だ、と思っていた。 「最後に何か質問はありますか?」という面接官の問いに対し、 「風を待っているところに風は吹きません。風を吹かそうとする人のところに追い風が吹く」, 2020年の春はいつもと違った。マスクが消えてもう何ヵ月、トイレットペーパーも相次いで消えていった。世界の終わりに直面しているような危機感に無性に苛立ち、社会秩序も少しずつ乱れていくように見えた。, 「新卒必読!」「〇〇対策が大事!」とばかり叫んでいる就職対策情報があふれて、中身が本当に役に立つとしても、そういう押し付けがましい言い方が嫌。就職情報の半分は、不安と焦りの商売にすぎないだろう。そもそも私は、決まり文句で塗り隠さなければ就職できない人間なのか。, それ以外のストレスの源もよく知っている。出版社は日本人にとっても狭き門。外国人の私にとっては大きすぎる夢、手の届かない星なのだ。大きすぎる夢を抱くことは初めてではないが、現実と夢の距離に泣かされるのも日常茶飯事。それでも、挑戦したい。そうでなければきっと一生後悔する。こんな気持ちを抱えながら、紫陽花の季節に二次面接を迎えた。, 二次面接が終わった後、護国寺に参拝に行った。自信がなくて半分絶望の気持ちで、「護国寺も、講談社も、二度と来ないかも」と、記念としてお守りを買った。会計の時、自分が一万円札しか持ってないことに気付き、「すみません」と言って、住職さんは難色を示しながらも一万円を手に取った。, 「あ、ちょっと待ってください」、私は何かを思い出した。「さっき面接でもらった交通費があります」と、封筒から千円札を取り出した。すると、彼は表情が明るくなり、流れで面接の話を聞いてきた。気づくと私は不安な気持ちをすべて住職さんに吐き出していた。最後におみくじを引きたいと申し出ると、住職さんは真面目な顔で「何が出ても心配ありませんよ」と励ましてくれた。, お守りが効いたのか住職さんの言葉が効いたのかは分からないが、私は今こうして内定者エッセイを書いている。, 「風を待っているところに風は吹きません。風を吹かそうとする人のところに追い風が吹く」, 「紆余曲折」って、一字ずつ見ていくと、思っていた2倍近く曲がりくねってるな……。就職活動を始めてすぐのころ、自己分析をしながらそんなことを考えていた。現実逃避だ。 最後に、就活中の皆さんにおみくじに書かれていた一言を捧げたい。 「ここまでやってダメだったら運がなかった」と思えるくらいには努力し、結果的に運よく内定を頂いた。   その面接官はニヤリと笑って、おもむろに口を開いた。 講談社の2022年度新卒採用サイトの内定者エッセイです。今年度もバラエティ豊かな22名の内定者が、受験するにあたっての決意、面接に向けた奇策、試験を経て得たことなどなど、とことん本音の就活体験を綴っています。 一度本音を言ってしまえば、あとはスラスラと言葉が出てきた。好きなお酒の種類、最近ハマった漫画、おすすめのストレス発散法など、嘘偽りのない自分をさらけ出せる面接は心から楽しかった。こんなに楽しく面接できるのなら、愚かな正直者でも悪くないと思えた。 最終面接が一番緊張した。 講談社の2022年度新卒採用サイトのよくあるご質問です。講談社の仕事や講談社の採用について、就活活動中の方から、よくいただくご質問と回答を掲載しています。 株式会社講談社 【その他マスコミ】 ※このページの情報は、キャリタス就活2021に掲載された情報を含む場合があります。 2022年度採用実施を保証するものではありませんので、ご了承ください。 企業からのメッセージを確認する.   志望動機もない企業を受ける中で、ふと自分の将来を想像した。「なんとなく就活を続け、なんとなく社会人になり、なんとなくの生活を送る」。そんな将来が容易に想像できた。と同時に、自分自身の夢を諦めたことを後悔する自分が見えた。その時、「今も昔も、そして将来も、好きであり続ける漫画に携わりたい。受かるかわからないけど、自分のやりたいことに精いっぱい向き合いたい」と思った。両親に頭を下げ、二度目の就職活動を始めた。   単純な私は、その日から5円玉を集めるようになった。買い物のお釣りでこつこつ集めたそれは、いつのまにか数十枚になっていた。 原因はわかっていた。素直すぎるのだ。 何度も聞かれた。   しかし、海月の魔法にかけられたあの夜、私はスーツを脱ぎ捨て「出版」という海を漂う夢を見る。ES落ちが続き絶望に沈む4月の夜、元気付けに見たアニメ『海月姫』が「私」を呼び覚ましたのだ。「やはり漫画やアニメが好きでたまらない! 馬鹿にされてもワクワクすることがしたいんだ、私は!」と、手がつかずにいた講談社のESに「アニメでアカデミー賞だって取ってみせる!」と書き込み、締切直前に完成させた。   自身を偽って、演技して、入社する前から会社との信頼関係が破綻してるじゃないか。